大久野島とは、瀬戸内海の芸予諸島に位置する無人島である。ここには
大日本帝国連邦陸軍の第6陸軍技術研究所の分室が置かれ、化学兵器全般の製造及び実験を執り行っている。日本で最初に「地図から消された島」となった島であり、事故発生時の安全性などを考慮してここが選ばれた。製造している化学兵器には以下のような種類がある。
青酸化合物を使用した化学兵器。初期にはシアン化水素(HCN)が用いられていたが、揮発性の高い青酸化合物の性質から気化したときの挙動として、シアン化水素は空気よりわずかに軽いことが問題視され、塩化シアン(NCCl)が用いられるようになった。前者はちゃ1号、後者はちゃ2号と呼称される。また、高高度偵察機の乗員の機密保持
や、秘密工作の暗殺に用いられるシアン化カリウム(KCN)もちゃ3号として製造されている。ちゃ1号は現在生産されておらず、ちゃ2号が化学砲弾として、ちゃ3号が錠剤及び水溶性の粉末として製造されている。
糜爛(びらん)剤と呼ばれる化学的特性を持つ化合物を使用した化学兵器。化学防護を行っていない場合皮膚や眼球を爛れさせ、吸入した場合は気道を破壊する。もっとも古典的な化学兵器であり、マスタード(イペリットとも)ガス(C₄H₈Cl₂S)とルイサイトガス(C₂H₂AsCl₃)の2種類が製造されている。実戦経験
や人体実験により、ルイサイトの方が即効性であり毒性は強いものの大気中への拡散が早いことが分かり、実戦ではマスタードガスの方が有効であるとされている。前者はきい1号、後者はきい2号と呼称され、両方とも化学砲弾として製造される。
嘔吐剤、またはくしゃみ剤と呼ばれるもので、吸入した場合激しい催涙・催吐効果を及ぼす化学的特性を持つ。糜爛剤や青酸化合物、神経ガスと比べて致死性は薄い(日本軍のあか剤の半数致死量は10,000〜15,000mg・min/m³)が、一般的な催涙剤と比べると致死性が高いため、実戦での使用もなされる。現在製造されているのはジフェニルシアノアルシン(C₁₃H₁₀AsN)とジフェニルクロロアルシン(Ph₂AsCl)の2種類を用途別に一定割合で混合したもので、非殺傷性手榴弾や小銃擲弾として製造され、主に低強度紛争や暴徒の鎮圧に使用される。
吸入すると肺水腫を起こし、数時間〜数十時間で死に至ることから窒息剤と呼称される。日本軍で用いられているのはホスゲン(CCl₂O)で、化学砲弾として使用される。ただホスゲンの沸点は8℃で、日本軍が長年対露(ソ)戦の主戦場として想定していた満州やシベリアの荒野での使用には適さないことから現在兵器としての製造はされていない。しかし製造コストが安く済み、工業利用も容易であることから民間工場への販売などが行われている。
世界大戦を機に一気に世界に広まった、神経剤と呼ばれる神経伝達物質を阻害する働きを持つものである。サリン(C₄H₁₀FO₂P)とEA-2912(C₉H₂₂NO₂PS)、VX(C₁₁H₂₆NO₂PS)の3種類が用いられ、それぞれくろ1号、くろ2号、くろ3号と呼称する。くろ1号、3号は常温で液体であり、主にクラスター弾頭や空中散布用として製造される。くろ2号は水溶性であるため錠剤の形で製造されている。ただし製造コストが高いため、そこまで生産量があるわけではない。
何に使われているかはお察しである。また、この他にも複数の神経剤の実用化を検討しているとされている。
暴徒鎮圧用の催涙剤である。クロロアセトフェノン(C₈H₇ClO)が使用され、非殺傷性手榴弾や小銃擲弾、スプレー缶として製造される。正規軍の装備であるほか、警察の機動隊にも導入されており、また民間向けにも護身用の催涙スプレーとして販売されている。こうして多用途に使用できるのは、半数致死量が25,000mg・min/m³とほぼ致死性がないからである。
トリクロロアルシン(AsCl₃)を使用する発煙弾である。厳密には化学兵器とはいえないが、ここ大久野島で生産されているもののひとつである。
大久野島には化学兵器の実験の被験体として多くの兎
と人間が飼われていることで有名であり、一部の兎は
死ぬまでの僅かな期間を陽の光の下で過ごさせてやろうという技研の厚意によって放し飼いにされている
(ちなみに人間は全員閉じ込められています)。このため、大久野島は別名「ウサギの島」とも呼ばれている。